▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲       居場所   作者:赤砂 多菜  キャラ:保科智子(いいんちょ) ※改行無しの為、読む時はウィンドウサイズで調整するなりして下さい ▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲  外に出ると寒気と共に白い景色がわたしを包んだ。 「あ、雪…」  駅のホームを出て、わたしは真っ直ぐ家に向かわへんかった。  降り続く粉雪の中を傘もささずに(もってなかったせいもあるけど)ただなんとなく歩いてるだけ。  立ち止まりたくない、そんな気分やった。  最後に会ったのはどの位前やったんやろか。  ほんとうに久しぶりだった、神戸に残してきた親友達。 (智子、キッツイやろ。ちゃんと友達いるん?)  …ほっといて  思わず、そう言い返しそうになった。  ほんま、自分は幸せそうな顔してからに。  あほやね、わたしに遠慮してずっとただの友達のままであいつのそばにおったん?  あいつはわたしにとっては単なる男友達やったし、あいつにとってもわたしは同様やったのに。  …でもな、今はその気持ち分かる気がするよ。  不安になるもんやからね、好きな人が出来ると。  人の流れ。  車の流れ。  見慣れた町並み。  たった、3日離れただけやったのに。  この街が懐かしく感じた。  まるで、誰かがおかえりと言ってくれたように。  神戸に戻ったとき、正直あまり懐かしいと感じへんかった。  今、わかったよ。もうここがわたしの帰る場所になってもうたんや。  ふふっ  不思議なもんやね。あれだけ、戻りたかったのに。  いつからやろ。  …そやな、  きっかけはやっぱり、あの時やな。  どれだけ、歩いたやろうか。  ふと、足を止めた。  日が沈んで暗くなり始めた公園。  ここは…想い出の場所。  何も変わったところはあらへん、普通の公園。  でもここであの日、藤田君に会われへんかったらどうしてたんやろ。  雨の中、何時間も立ちっぱなしで、倒れるまでそうしてたんやろか?  …たぶん、そうやろな、わたしはあの時なんもかんもなくしたと思いこんでいたんやから。自分の帰る場所をなくしたと…  それは、たぶんただの思いこみ。  …でも、本当はなくしてしまったのかも知れない。あの時わたしは新しい自分の居場所をみつけてもうたから。 「…どないしょうか?」  もう暗い空を見つめて、わたしは誰にともなく呟いてた。  ここから藤田君の家は近くや。  よってこうか?  …でも、ま、ええか。また明日にでも会えるんやし。  そう思ってきびすを返そうとしたその時、 「委員長?」 「へ?」  振り返ると、そこに藤田君がおった。  え? なんで? 「今日、帰ってくるって聞いてたけどな」  そう言って、傘をスッと差し出してくれた。  …傘?  そして、雪がずっと降り続いていた事を思い出した。  慌てて、自分の姿を見ると……ずぶ濡れや…  どうりで、なんか寒いなぁって… 「ハクシュッ!」 「何やってんだよ」  呆れたような藤田君の声。  ううっ、風邪ひいてもうたかな。 「ごめん、藤田君、もう帰るわ」 「…て、おいおいどこいくんだよ」 「どこって、帰るんやけど?」 「せっかく、ここまで来てか? 俺の家よってけよ」  そう言ってわたしを引き寄せて抱きしめる。 「ちょ、濡れるで」 「いいから、いいから」 「たくっ、知らんで」  溜息一つついて、わたしは藤田君のするがままに任せた。 「下心があるんちゃう?」 「まあな」  …この男は、ごまかしすらせんと 「たくっもう、それやったらはよいこ。ほんまに風邪ひくわ」 「まてよ、もうちょっとこのまま」 「…勝手にし」  わたしを抱きしめたままの藤田君の肩越しに空が見えた。  あの日のように曇っていて、同じように暗い空。  あの時、ここでわたしは居場所を得たんや。この藤田君の両腕の中。  何ものにも代え難い場所。 「委員長?」 「…なんでもないよ。さ、いこ」  この場所は絶対になくしたくないなぁ… --------------  その日、藤田君の家に泊まったわたしは二人そろってほんまに風邪をひいた。  …そやから、やめよ言うたのに………アホ